出版社現代書林
新卒採用
社長
経営者でありながら、社員の誰よりも書籍の企画・編集をやってませんか……?
これからの現代書林について、書籍づくりについての両面をインタビューしてみました。
学生時代は?
―― あらためて松島さんは、約30年前に新卒で現代書林に入社されているわけですが、きっかけは何でしたか?
1996年当時はまだネットが無いので、創出版さんが刊行している『マスコミ就職読本』で知りました。
マスコミ業界志望の学生の定番でしたからね。
専門書ではなく、一般書や雑誌を出している出版社に「募集してますか?説明会やってますか?」ととりあえず問い合わせていて、その中の一つでした。
神戸に住んでいたから夜行バスで往復しないといけなくて、全部で10社も受けられなかったんじゃないかな?
―― 関東以外に出版社が少ないのは今と変わりませんね……。
当時はどんな学生でしたか?
シンプルに本を読んで、映画を映画館やレンタルで観て、バイクでツーリングして……終わり(笑)
―― 終わり(笑)
授業はサボってないから成績はよかったですよ(笑)
―― 読んでいたのは小説ですか?
小説でした。
好きな雑誌があったから、そこに載っていた本から徐々に広げていって……最新のものというより、何でもかんでも読んでました。
今の読書傾向も、一人の作家をずっと追いかけることは稀で、小説の次はノンフィクション、その次は海外翻訳、その次は新書……みたいに、全く違うジャンルの本を意識的に選びますね。
それがちょうど脳への刺激になって心地いいんです。
新人時代は?
―― そんな学生だった松島さんは入社当時、どんな新人でしたか?
改めて考えると、分からないことがあっても先輩に聞かなかったな。
30年前はまだ昭和感が強くて、最初に少し教えてもらった後はほったらかし(笑)
でもたぶん「自分で試行錯誤して何とかするタイプ」だから、それがちょうどよかった気がする。
コツを掴むには2年ぐらいはかかったかな……。
実は、企画提案以外の制作発注や流通の全体像を知る機会があったおかげで、腑に落ちたんですよ。
「あっなんだ、こういうことか」って。
そしたら急に企画が決まるようになった。
―― 不思議ですね。何が変わったんでしょう?
やっぱり言えることや、説得力が違うんでしょうね、いま何をやっているのかを自分が分かっていると。
だから自分の後輩になった人たちには、「今やっているこれはこういう意味だよ」ってすごく説明するようにしてるんです。
聞いている側からすると情報量が多いかもしれないですけど、私は自分がやっていることの意味、それから全体の流れを知りたいし、そのおかげで上手くいったので。
―― 分かる気がします!
まず何か作業を覚えると、「じゃあなぜこうなっているのか?」って少しずつ気になってくるんですよね。
それが理解できると、すごく面白くなる瞬間は私にもあります。

プライベートは?
――では今度はプライベートについてなんですが、趣味はやはり……?
これはやっぱり読書。
2024年は仕事以外で70冊ぐらい読みましたね。
週に1冊くらい。
今は中国の翻訳書のめちゃめちゃユニークな本読んでる(笑)
―― それはぜひ感想が聞きたいです(笑)
では特技は何ですか?
料理です。
最近は炊飯器でカルボナーラを……。
―― 炊飯器で!?
手軽で美味しいよ(笑)
週末に家族に作ったら喜ばれます。
―― いつか食べてみたい!
料理のどういうところが面白いですか?
仕事のストレス発散になるんです。
原稿を何度も何度も読んでると、面白いかどうか分からなくなってくるんですよ。
でも料理はすぐ作れるし、食べたら美味しいかどうかすぐ分かるし、周りも反応してくれる。
複数工程を同時に動かすのが二つの共通点だと感じるのですが、本作りでは何か月もかかることが、料理なら30分くらいでできる。
それですっきりして、また仕事に集中できる。
―― へええ、それは意外な共通点でした。

仕事のスタンスは?
―― では、人生の分岐点だったと思うところはありますか?
学生時代は神戸で暮らしていたのですが、阪神・淡路大震災を経験したことでしょうか。
本を読み始めるきっかけになりました。
―― その「本」が、今の仕事に直接つながっていますもんね、確かに。
ではずばり、仕事のやりがいは何ですか?
書籍というのは、著者の想いが形になったものです。
そして何十年と残り続けるものでもある。
著者の伴走者としてそこに関われることですね。
たとえ本の中に自分の名前が残らなくても、本の中では自分のアイデアが詰まっています。
もし自分がいなければ、もし自分がその著者に出会っていなければ、この世に生まれてない本ですから。
―― もちろん著者の本ではあるけれど、自分がいたからこそ、この形になった、その達成感は編集者ならではですね。
ではその編集という仕事、一言で言うと何だと思いますか?
プロジェクトマネージャーですかね。
原稿を読んで何かをする人だと思いがちなんですけど、そうじゃなくて、著者、デザイナー、イラストレーターたちのチームを動かして、アイデアをメンバーに伝えて、一つのものを作っていく。
このほうが近いと思います。
―― チームリーダーというより、出版というプロジェクトを推進する人なんですね。
普段の仕事ではどんなことを心掛けていますか?
書籍編集だけでなく、常に新しいことにチャレンジすることです。
同じことをやっていたら飽きちゃうんです。
「新しいことをやらなきゃ」というより、飽きちゃうから「次、何かないかな?」が近い。
動画編集したり、SNSで発信してプロセスマーケティングしたり……新しいことをやって仕事が増えているほうが、元気に仕事ができるから。
本の読み方とか映画の見方と同じかもね。
刺激があったほうが頑張れる。
―― 「元気に仕事ができるからやる!そのほうが楽しいからやる!」っていいですね!
では、どういう瞬間が楽しいですか?
いっぱいありますよ!
いいタイトルが浮かんだとき、いい原稿が著者から送られてきたとき、いいカバーデザインがデザイナーから届いたとき、いい感想を読者がAmazonのレビューに書き込んでくれたとき……。
言いたいことがちゃんと伝わったと実感できたり、意図を汲んでくれて想像よりもっといいものが出来上がったり、そういう瞬間はやっぱりうれしいよね。
―― じゃあ逆に大変なときは?
複数の原稿がちょうど同時に校正段階だったときに、文字統一で混乱することがありますね。
例えば「~とき」か「~時」、どっちに揃えていたのか、とかです(笑)
―― メンタル面の大変さが出てこないところが恐るべし……。
本当に仕事を楽しんでいらっしゃるんですね……!

これからの現代書林は?
―― では少し話が変わりまして、経営者として、いま力を入れていることは何ですか?
書籍というのは、ずっと今後も残っていくものだと思います。
でもこれからも書籍だけでこの会社がやっていけるかどうかには危機感を持っています。
「著者が持っているコンテンツをどう届けていくのか」を、書籍という形にこだわらず、時代の変化に合わせながらチャレンジしていきたいです。
簡単ではないけど。
―― 書籍も他のメディアでも「どう届けるか」を考えるのは同じなんですね。
今後、現代書林をどんな会社にしていきたいですか?
30年近く前に自分が入社したときからすでにそうでしたが、当社は『肩書で呼ばずに、「~さん」と呼ぶ』会社です。
いま私もみんなから「社長」ではなく「松島さん」と呼ばれていますし(笑)
―― 実際、入社直後の私から見ても、すごく馴染みやすくてありがたい社風でした。
このフラットな社風は、いつまでも守っていきたいですね。
―― 社員に「こうあって欲しい」と求めるものはありますか?
私自身が心掛けていることと重なりますが、チャレンジすることですね。
昨日と同じことをしても、同じ仕事しかできない。
そうすると成長もないんですよ。
昨日の自分にほんの少しでもいいので何かをプラスして新しい仕事をしてもらいたいです。
人って同じことをやりがちなんだけど、少しのプラスが続いていくと大きな変化になるので、それが理想ですね。
私は同じことをやってると飽きてきて、違うことがやりたくなるので、ここにぴったり合ってるのかもね。
―― ご自身の編集の仕事では、新しいことをどのように取り入れているんですか?
前に作った本と同じジャンルでも、前とは違うテーマ、前とは違うキーワード、前とは違うスタッフさんに依頼する、とかですね。
そこで前と同じになっちゃうと、それは居心地がいいけどとどまってしまう。
意識的に変化をつければもっと視野も広がって、選択肢も広がって、自分の範囲が広がって……知らない間に大きく成長できているものです。
―― なるほど~。
そう考えると、チャレンジするってそんなに難しいことでもないと思えてきました……!
そうそう、昨日とちょっと違うだけでいいんです。

就活生に一言!
―― それでは最後に、就活中の学生さんにメッセージをお願いします。
就活ってたいへんですよね。
業界研究、エントリーシート、SPI対策、面接準備……どんな会社が自分に合っているかなんて、いきなり選べないと思います。
だからこそ、その前にやってほしいことがあります。
会社や業種、職種を抜きにして、どんなことなら自分がいちばん心地いいか、「動詞」で考えてみてください。
「動詞」というのは、例えば「伝える」「考える」「支える」「育てる」「つなげる」「挑戦する」なんかです。
あなたが過去に取り組んできたことを振り返ると、共通の「動詞」が隠されているはずです。
「こういうことをしているのがしっくりくるな」とか「こういうことはつい無意識にやってしまうな」とか。
それは、あなたがいちばんあなたらしくいることができる「行動」であり、「スタンス」です。
その「動詞」をヒントに、それにフィットするものは何かな?と就職活動を見直してみると、進むべき道が見えるかもしれませんよ。
―― きっとみなさん自己分析にも取り組んでいると思いますが、それを見直して「動詞」探しをすると、その延長線上に自分が輝ける仕事があるのかもしれませんね。
たくさんお答えいただいてありがとうございました!

